こんにちは。
神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西・猪名川など、阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
在留資格のご相談だけでなく、相続や遺言といった「暮らしの終盤」に関わる相談も日々お受けしています。
今日は、制度解説というより、最近、現場で強く感じていることを書いてみたいと思います。
在留資格(VISA)専門✖️終活(遺言・相続)専門
である私ならではの記事かもしれません。
外国人が「日本で暮らす」ということの大変さ
外国人の方と接していると、つくづく思います。
日本で暮らしていくのは、想像以上に大変です。
言葉、文化、役所手続き、人間関係。
旅行で数日滞在する分には、日本はとても安全で清潔で、楽しい国です。
正直なところ、
「テーマパークの入場料のように、入国時にもう少し負担があってもいいのでは」
と思ってしまうことすらあります。
最近では、物価の上昇や社会保険料の負担増など、
日本で『暮らす』ことのコストは、確実に重くなっています。
短期滞在で日本を「楽しむ」人と、
長期にわたって日本で「生活する」人。
その違いは、もう少し意識されてもいいのかもしれません。
日本で育った人ほど、見えにくい壁にぶつかる
日本で教育を受け、日本語を話し、
漢字・ひらがな・カタカナ、独特の言い回しや空気感まで身についている。
そういう方であれば、日常生活に大きな支障はありません。
ところが最近、私が強く感じるのは、
日本で生まれ育った在日外国人の方ほど、
国籍が違うことで、思いがけず苦労する場面がある
ということです。
それが、相続の場面です。
日本人にとって「当たり前」の戸籍がない
日本の相続は、戸籍制度と切り離せません。
誰が配偶者で、誰が子で、誰がきょうだいか。
それを戸籍で証明できることが前提です。
しかし、外国籍の方には戸籍がありません。
たとえば、在日韓国人の方の場合、
日本の「法の適用に関する通則法」により、
相続には原則として被相続人の本国法(韓国民法)が適用されます。
制度だけを見ると、
韓国民法は日本よりも配偶者に手厚く、
「日本より有利」と感じる方もいるかもしれません。
制度より怖いのは「書類がない」こと
問題は、ここからです。
在日韓国人の方の中には、
日本の役所には婚姻届を出しているものの、
韓国総領事館等に
婚姻の届出をしていないケースが少なくありません。
普段の生活では、ほとんど問題は起きません。
しかし、配偶者が亡くなった瞬間、状況は一変します。
-
銀行口座は、日本人と同じように凍結される
-
預金を引き出すには、遺産分割協議書か遺言が必要
-
そのためには「家族関係を証明する書類」が必要
ところが、
それを証明する書類が、存在しない
という事態に直面することがあります。
そこから始まる「説明の連鎖」
もちろん、方法がまったくないわけではありません。
日本の婚姻届の受理証明書、住民票、
過去の登録情報などを一つひとつ積み上げて、
「この人が配偶者である」ことを説明していくことになります。
ただし、
時間も手間もかかり、精神的な負担も小さくありません。
日本人にとっては「当たり前」でも
日本人であれば、
こうしたことで困ることは、ほとんどありません。
戸籍があり、
相続の流れが「制度として」用意されているからです。
しかし、外国籍のまま日本で亡くなった場合、
その財産の扱いは、想像以上に複雑になります。
これは、
「特殊な人の話」でも
「一部の国籍の話」でもありません。
日本に長く住み、
日本社会の一員として暮らしてきた人ほど、
直面しやすい問題です。
最後に ― 公正証書遺言が、不安を解消する理由
ここまで読んでいただき、
「では、どう備えればいいのか」
と感じられた方も多いと思います。
結論から言えば、
公正証書遺言を作成しておくことが、こうした不安をもっとも確実に軽減する方法の一つです。
なぜなら、公正証書遺言には、次のような特徴があるからです。
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戸籍の有無に左右されにくい
-
相続人全員の合意(遺産分割協議)を前提としない
-
銀行や法務局などの手続きが、実務上きわめてスムーズ
外国籍の方の相続では、
「誰が相続人なのか」「配偶者であることをどう証明するのか」
という入口部分でつまずくケースが少なくありません。
しかし、公正証書遺言があれば、
「この内容に従って財産を承継させる」
という被相続人の意思が、
公証人という公的立場で確認・作成されているため、
相続人関係を一から説明し直す必要が大きく減ります。
特に、
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国籍が日本でない
-
本国の家族関係登録が未整理
-
国際結婚をしている
-
日本で生まれ育ったが戸籍がない
といった事情がある方ほど、
遺言があるかどうかで、残された配偶者や家族の負担は大きく変わります。
公正証書遺言は、
単に「財産の分け方」を決めるものではありません。
それは、
残された人が、無用な手続きや説明、対立や不安に巻き込まれずに済むようにするための“最後の備え”です。
在留資格や永住は、
「今、どう生きるか」の問題です。
一方で、遺言は、
この先も日本で安心して暮らしていくための土台を作る行為だと、私は考えています。
もし、
「自分の場合はどうなるのだろう」
と少しでも感じたなら、
それは備えを考える十分なタイミングです。
在日外国人で日本で長く暮らし日本に財産があるならば、
公正証書遺言の作成は「マスト」だと私は考えています。
知らなかったことで困らないように。
そして、知っているからこそ、静かに備えられるように。




