こんにちは。
神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
遺言・相続といった「人生の終盤」に関わるご相談も日々お受けしています。
遺言・相続の話をしていると、よくこんな言葉を聞きます。
「うちは特別な財産もないし、遺言はいらないと思っていて」
実はこの感覚こそが、日本で遺言がなかなか普及しない最大の理由だと感じています。
2026年時点の調査や制度を踏まえると、日本には遺言を書かなくても“何となく回ってしまう仕組み”があり、それが結果として問題を先送りにしている側面があります。
日本には「遺言がなくても動く」強力な制度がある
結論から言うと、日本では
「遺言書がなくても、国が定めたルール(法定相続)が非常に強力で、自動的に機能する」
という特有の背景があります。
これが、遺言を書く動機を弱めている最大の要因です。
① 法定相続制度への「おまかせ」意識
日本の民法では、
「誰が」「どの割合で」相続するかが、あらかじめ細かく決められています。
さらに、日本では人が亡くなると、その瞬間に相続人へ権利が当然に移る仕組みになっています。
アメリカなどでは、亡くなった後に裁判所が関与する「遺産管理手続き(プロベート)」を経なければ財産は動きません。
一方、日本ではそうした手続きがなくても相続が始まります。
そのため、
- 「法律通りに分ければいい」
- 「わざわざ遺言を書かなくても大丈夫」
という意識が根強く残っています。
「遺言なし」がデフォルトになっている国、それが日本です。
② 遺言を書いても“自由にならない”遺留分制度
もう一つ、日本特有の制度が「遺留分(いりゅうぶん)」です。
遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の相続人に、最低限保証される取り分のことです。
たとえば、
- 「全財産を長男に」
- 「面倒を見てくれた人に全部渡したい」
と遺言を書いても、他の相続人は遺留分を請求できます。
海外では「気に入らない子には一切相続させない」という遺言も可能な国がありますが、日本ではそうはいきません。
このため、
- 「どうせ全部は決められない」
- 「遺言を書いても意味が薄いのでは」
と感じてしまう方も少なくありません。
③ 心理的・文化的な壁
直近の調査を見ると、
日本人が遺言を書かない理由として、特に多いのが次の2つです。
「うちは資産が少ないから」
相続=お金持ちの問題、という誤解は非常に根強いです。
しかし、現場で多いのは
「自宅しか財産がない家庭」で起きる相続トラブルです。
不動産は簡単に分けられず、売るか・住み続けるかで意見が割れます。
資産額の大小に関係なく、揉める要素は十分にあります。
それでも、「自分には関係ない」という心理が、遺言作成のハードルになっています。
「まだ元気だから」
もう一つ多いのがこの理由です。
日本では、死を連想させる行為を避ける文化が強く、
「そのうち」「もう少し先で」と先送りにされがちです。
結果として、
- 認知症で判断能力を失う
- 病気や事故で突然意思表示ができなくなる
こうしたケースで、「書きたくても書けなかった」という事態が起きています。
④ 形式の厳しさと手間の問題
制度面でも、遺言はハードルが高いものでした。
自筆証書遺言のリスク
自分で書く遺言は、
日付や署名、書き方を少し間違えるだけで無効になる可能性があります。
「書いたつもり」が、実際には使えない――
これが長年の問題でした。
公正証書遺言の心理的ハードル
確実な方法である公正証書遺言は、
- 専門家への費用が高額
- 公証役場への出向
- 証人の手配
といった負担があり、
「そこまでしなくても…」と敬遠されがちです。
それでも、状況は少しずつ変わっている
一方で、国も手を打ち始めています。
自筆証書遺言書保管制度(2020年〜)
法務局が遺言を保管してくれる制度が始まり、
- 紛失・改ざんの防止
- 家庭裁判所での検認が不要
といったメリットが生まれました。
「自分で書く遺言」のリスクは、以前より確実に下がっています。
デジタル遺言の議論(2026年現在)
現在、スマホや電子データで遺言を作成できる
「電子遺言」の法整備も検討段階に入っています。
もし実現すれば、
現役世代や若い世代にも遺言が身近になる可能性があります。
私は個人的にはまだ時間がかかると思っていますが。。。
遺言が必要かどうかは「家庭ごとに違う」
日本で遺言が普及しないのは、
「日本人が無関心だから」ではありません。
むしろ、
- 制度が親切すぎる
- 何となく回ってしまう
- 問題が見えにくい
この構造そのものが原因だと感じています。
ただし、
子どもがいない
不動産がある
再婚している
相続人同士の関係が微妙
こうした事情が一つでもあれば、
「法定相続に任せること」が最善とは限りません。
最後に
遺言は、
「財産の話」であると同時に、
家族へのメッセージでもあります。
必要かどうかは、人それぞれです。
でも、「考えないまま迎える相続」が、
一番リスクが高いことだけは、現場で何度も見てきました。
もしご自身の状況で
「遺言が必要かどうか分からない」
そう感じたら、その段階で十分です。
一緒に整理するところから、お手伝いしています。


