#77 特定技能「外食業」受け入れ停止──現場で何が起きるのか

05在留資格

こんにちは。兵庫県の阪神地域(神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など)を拠点に、在留資格・外国人雇用の相談を日々受けている行政書士の小田晃司です。


上限に達した外食業の特定技能

2026年3月末、外食業の特定技能1号についてのニュースがありました。受け入れ上限の5万人に達する見込みとなり、4月13日以降は新たに受理された申請については原則として不交付となる、という方針が示されたのです。

2月時点ですでに約4万6,000人。このペースであれば、上限到達は「時間の問題」だったとも言えるかもしれません。

なぜここまで急速に枠が埋まったのでしょうか。


そもそも、なぜ外食業はここまで外国人材に頼るようになったのか

理由の一つとして挙げられるのが、日本人の採用が成り立ちにくくなってきている、という状況です。

飲食業は労働環境が厳しく、待遇改善もなかなか追いつかない。長い営業時間、深夜の仕事、体力勝負の現場。そうした条件が重なるなかで、外国人材への依存が静かに、しかし急速に進んできたのではないかと感じています。

これは外食業だけの話ではなく、日本全体の傾向としても見えてきています。外国人材がいつのまにか「補助的な存在」から「事業を成り立たせるための前提」へと変わりつつある分野は、少なくないように思います。


受け入れが止まると、現場で何が起きるか

影響はかなりリアルなものになるのではないかと懸念しています。

採用できない企業が出てくる

チェーン飲食店、地方の個人店、深夜営業の店舗──こういった職場は特定技能への依存度が高く、新規受け入れの停止はそのまま「採用手段を失う」ことにつながりかねません。

留学生アルバイトへの依存が強まる

代替手段として真っ先に思い浮かぶのが、留学生の資格外活動(アルバイト)です。ただし、これには週28時間という制限があります。それを超えれば不法就労となり、企業も本人も在留資格の取消リスクを負うことになります。「人手が足りないから」という理由で結果として、資格外活動の時間超過(いわゆるオーバーワーク)に踏み込んでしまうリスクが、今後高まっていく可能性があります。

企業の二極化が進む

そして、これが一番大きな変化になるかもしれないと感じています。

今後、外国人雇用において企業は二つに分かれていく可能性があります。外国人材を前提に仕組みを整えてきた会社と、そのつど場当たり的に対応してきた会社です。

ビザが取れさえすればいい、という考え方では立ちゆかなくなってきているように思います。制度の理解・管理体制・定着支援まで含めて、はじめて「機能する仕組み」と呼べるのではないでしょうか。


上限設定は「失敗」なのか

「外国人を必要としているのに、なぜ止めるのか」と感じる方もいるかもしれません。ただ、これは単純に「止めた」という話ではないように思います。

特定技能制度はもともと、分野ごとに人数を管理し、5年ごとに見直す設計になっています。今回の件は想定された範囲内の”制御”とも見ることができるかもしれません。

ただ、だからといって現場の混乱が小さくなるわけではない。そこに、この問題の難しさがあるように感じます。


見えてきた本質

今回の出来事が浮き彫りにしたのは、おそらくこういうことではないでしょうか。

「外国人がいないと回らない現場なのに、制度は制限されている」

このズレです。制度と現場のギャップ、と言い換えてもいいかもしれません。そしてこのギャップは、今後さらに広がっていく可能性もあるように思います。


では、企業はどう動けばいいのか

いくつかの視点を、参考までにお伝えしたいと思います。

採用ルートを分散する。 特定技能だけに頼るのではなく、留学生からの就職や技術・人文知識・国際業務といったほかのルートも組み合わせて考えることが、リスク分散につながるかもしれません。(※在留資格ごとに従事できる業務範囲には制限があります)

「採用」より「定着」を重視する。 採れればいいではなく、いかに長く、安定して働いてもらえるかを前提に仕組みを考えることが、これからはより重要になってくるのではないでしょうか。

制度を正しく使う。 人手が足りないからといって、資格外活動の時間超過など、制度の枠を超えた運用に近づいてしまうと長期的なリスクになりかねません。

「人手不足だから仕方ない」という言葉だけでは、乗り越えにくい局面が増えてきているように感じています。


最後に

外食業の今回の件は、一業種だけの問題ではないかもしれません。他の分野でも同じようなことが起きる可能性がありますし、制度と現場のズレは業種を問わず共通の課題になりつつあるように思います。

外国人材の受け入れは、「何人採れるか」という量の問題から、「どう共に働くか」という質の問題へと移っていくと同時に「実務として回せる体制づくり」が重要になってきているのではないでしょうか。

その視点を持てる企業が、これからの時代により安定して人材を確保しやすくなるのではないかと、私は感じています。

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