#63 「オンラインで公正証書遺言が作れる」は本当か? ―2025年10月以降の“制度と実務のズレ”―

01相続・遺言

こんにちは。
神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
相続・遺言・成年後見といった、いわゆる終活まわりのご相談を日々お受けしています。

最近、
「公正証書遺言もオンラインで作れるようになったらしい」
という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

確かに、2025年10月以降、公正証書遺言のデジタル化(オンライン作成)は制度上“可能”になりました。
ただし、ここには大きな注意点があります。

結論から言うと、

「制度としては可能。しかし、実務としてはほとんど使われていない」

これが、現場の率直な評価です。


制度上「可能」でも、実際に求められる条件はかなり厳しい

オンラインで公正証書遺言を作成するためには、次の条件をすべて満たす必要があります。

  • 遺言者本人が
    • 自分専用の パソコン を所有していること
    • Microsoft Teams を問題なく操作できること
  • 電子署名用ソフトを導入し、
    • 署名データを公証役場と共有できる環境があること
  • スマートフォンやiPadは非対応(パソコン必須)

さらに重要なのは、
遺言者だけでなく、証人2名、公証人側もオンライン環境に対応している必要がある
という点です。

このことから、

「技術的には可能だが、実際にここまで環境が整うケースはほとんどない」

という状況です。


結局、全員が同じ場所に集まるなら…?

仮に、

  • 行政書士が遺言者宅に出向き
  • パソコンを設置し
  • Teamsや電子署名の設定を行い
  • 証人2名も同席する

という体制を整えたとしても、
その場には「遺言者+証人2名+行政書士」が揃うことになります。

そうなると、

「それなら最初から公証役場で対面手続きをした方が早くて確実」

という判断になるのが、実務の世界です。

以下は私の個人的感想にすぎませんが、公証役場全体としても
オンライン公正証書遺言の運用にはかなり消極的じゃないかなあと感じています。

現時点で実際に使われているのは、

  • 事業用定期借地権などの法人案件
  • 東京など遠隔地との事業取引

といった、例外的なケースがほとんどのようです。


「全国どこの公証役場でも作れる」という意外な事実

一方で、あまり知られていない重要なポイントもあります。

公正証書遺言は、住所地に関係なく、全国どこの公証役場でも作成可能です。

ただし注意点として、

  • 公証人は「所属都道府県外」で職務を行うことはできない
  • 例えば兵庫県の公証人は、兵庫県内でのみ出張対応が可能

という制限はあります。


デジタル化が進んでも、「対面」が当面の現実解

このヒアリングを通じて改めて感じたのは、

  • 制度は一歩先に進んでいる
  • しかし、実務と生活環境はまだ追いついていない

というギャップです。

少なくとも2026年現在、
「スマホ一つで公正証書遺言が作れる時代」には、まだ至っていません。

だからこそ現実的には、

  • 公正証書遺言を
  • 信頼できる専門家と一緒に
  • 対面で、確実に作成する

この方法が、
最も安全で、結果的に負担の少ない選択であるケースが大半です。


最後に:制度の言葉より「現場の実情」を基準に

遺言制度は、これからも確実に変わっていきます。
デジタル化の流れ自体は、間違いなく進むでしょう。

ただ、
「できること」と「実際に使えること」は違う
――これは、相続や遺言の現場で非常に重要な視点です。

制度の言葉だけで判断するのではなく、
「今の現実では、何が一番確実か」
そこを一緒に考えることが大切だと感じています。

 

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