こんにちは。
神戸・尼崎・西宮・伊丹・宝塚・川西・猪名川など、阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
在留資格(ビザ申請)を中心に、外国人雇用や定着に関するご相談を日々お受けしています。
2026年1月、厚生労働省は、特定技能1号(介護分野)で働く外国人について、通算在留期間を6年まで延長できる条件を示しました。
一見すると「制度が少し柔軟になった」と感じられるかもしれません。
しかし、実務の現場と今後の制度改正の流れを踏まえると、これは単なる延長措置ではありません。
「介護人材の採用・育成の考え方を本気で変えるべきだ」という、国からの明確なメッセージだと、私は受け止めています。
介護分野における在留資格の「特殊な構造」
まず押さえておきたいのが、介護分野の制度的な位置づけです。
特定技能1号の在留期間は原則5年です。
他分野と異なり、介護分野には特定技能2号が存在しません。
その代わり、介護福祉士国家試験に合格して「在留資格・介護」へ移行することが、事実上の「2号以上」の役割を果たしています。
つまり介護分野では、「どの在留資格で入ってくるか」よりも、**「最終的に国家資格へどうつなぐか」**が、他分野以上に重要になるのです。
6年目延長は「猶予」ではなく、最後の準備期間
今回示された6年目延長(特例)の要件は、次のような内容です。
通算在留期間の最終年度に、介護福祉士国家試験を全科目受験していること。
試験科目群のうち、少なくとも1つ以上で一定水準以上の得点を得ていること。
さらに、総得点が合格基準点の8割以上であることが求められます。
※ 実際には、得点配分などの細かな要件があります。
そして、合格した場合は「在留資格・介護」への変更申請を行い、不合格の場合は速やかに帰国することを誓約する仕組みになっています。
これはつまり、6年目は「もう1年働けるボーナス期間」ではなく、国家資格取得を前提とした“最終チャレンジ期間”だということです。
令和9年以降を見据えると「採用ルートの一本化」は危険
ここからが、事業者にとって最も重要なポイントです。
令和9年(2027年)以降は、既存制度の見直しに加え、育成就労制度の本格運用、各採用ルートの要件変更・整理が進むと見込まれています。
その中で、「特定技能だけに頼る」「このルートさえあれば安心」という発想は、かなりリスクが高くなってきています。
これから求められるのは、特定技能、留学生(養成施設)、既存職員の資格取得支援など、複数ルートを前提とした採用・育成体制です。
見落とされがちな論点:養成施設卒業者の「経過措置」が終了へ
特に注意が必要なのが、介護福祉士養成施設卒業者に関する経過措置です。
これまでは、養成施設を卒業すれば、国家試験に合格していなくても、一定期間(5年間)は介護福祉士として働けるという扱いがされてきました。
しかし、この経過措置は、令和8年度末(2027年3月)までに卒業する方が対象で終了します。
令和9年度以降は、卒業=国家試験合格が必須という、よりシビアな制度に移行します。
「養成施設を出ているから安心」という前提は、まもなく通用しなくなるのです。
特定技能で入職した場合の「現実的な王道ルート」
こうした制度全体を踏まえると、特定技能で介護分野に入職した外国人材の戦略は、かなり明確です。
在留期間は原則5年(+最大1年)。
その間に、日本語力を高め、実務経験を積み、国家試験に挑戦してもらう。
👉 「5年で介護福祉士を目指す」前提で育てる
この設計を最初から本人と共有し、法人・現場・本人が同じゴールを見ることが、定着のカギになります。
制度の話は、すでに「人事・経営戦略」の話
現場でよく耳にするのは、令和9年以降を見据えた制度変更への不安、採用ルートをどう組み合わせるべきか、国家資格を前提とした育成設計の難しさ、といった声です。
こうした悩みは、もはや制度論ではなく、人事・経営の中核的なテーマです。
阪神地域でも、「せっかく育てた人が5年で帰ってしまう」「制度が変わるたびに右往左往している」という声を、実際によく耳にします。
最後に──制度は変わる。だからこそ、先に考え方を変える
制度はこれからも変わります。
しかし、早く知っているか、構造として理解しているか、先に準備しているかで、現場の負担と結果は大きく変わります。
今回の6年目特例は、「まだ間に合ううちに、採用と育成の設計を見直してください」という、国からのサインだと、私は受け止めています。
制度変更に振り回されるのではなく、先手を打って準備する。
その積み重ねが、5年後、10年後の現場を支えます。
外国人材の採用・育成・定着でお困りのことがあれば、いつでもご相談ください。


