#57 空き家と所有者不明土地は、なぜ減らないのか ―統計データが示す「相続」と「遺言」の決定的な関係

01相続・遺言

こんにちは。
兵庫県・阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
相続・遺言・成年後見など、いわゆる終活周りのご相談をお受けしています。

今回は、感覚論ではなく国の公式統計データをもとに、

  • なぜ空き家や所有者不明土地が増え続けるのか
  • その出発点がどこにあるのか
  • 私たち一人ひとりにできる現実的な対策は何か

について整理します。

結論から言えば、
空き家・所有者不明土地問題の多くは「相続の場面」で生まれ、
その予防策として最も確実なのが「公正証書遺言」です。


1.空き家は「すでに900万戸」を超えている

総務省が公表した
「令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)」によると、

  • 全国の空き家数:900万2千戸
  • 空き家率:13.8%(過去最高)

とされています。

これは一時的な増加ではなく、長期的に右肩上がりで増え続けている数字です。


2.問題なのは「使う予定も、売る予定もない空き家」

空き家には、賃貸用・売却用・別荘など様々な種類があります。
しかし、特に問題とされているのが、

「賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家」です。

同調査では、

  • このタイプの空き家が 385万6千戸
  • 2018年調査から 36万9千戸増加

していることが示されています。

さらに建て方別に見ると、

  • 一戸建て空き家:352万3千戸
  • そのうち 80.9%
    「賃貸・売却・別荘の予定がない空き家」

となっています。

これは統計的に見ても、

「親が住んでいた家を相続したが、
誰がどうするか決まらないまま、使われなくなっている」

という状態が、日本全国で広がっていることを示しています。


3.空き家の“入口”にあるのは「相続」

では、空き家はどのような経緯で発生しているのでしょうか。

国土交通省の
「令和6年空き家所有者実態調査」によると、

  • 空き家の取得経緯の 57.9% が「相続」
  • 空き家になった直接のきっかけの 58.3% が「元の所有者の死亡」

となっています。

つまり、
空き家問題の多くは「相続が始まる瞬間」に生まれているのです。


4.「相続前の対策」が、放置されるかどうかを分ける

同じ調査では、非常に重要なデータも示されています。

相続前に、

  • 家族で話し合いをしていた
  • 遺言を作成していた
  • 何らかの準備をしていた

こうした「対策」があったかどうかで、その後の空き家の扱いに大きな差が出ています。

具体的には、

  • 対策をしていなかった空き家
    → 空き家のまま所有し続けた割合:45.1%
  • 対策をしていた空き家
    → 同割合:29.4%

となっており、
対策をしていなかった場合は、約1.5倍の確率で空き家が放置されていることが分かります 。


5.放置の先にあるのが「所有者不明土地」

空き家が放置され、相続登記が行われないまま時間が経つと、
次に起きるのが「所有者不明土地」です。

所有者不明土地問題研究会(増田寛也座長)の最終報告では、

  • 2016年時点:約 410万ha
  • 対策を取らない場合、2040年には約 720万ha

まで拡大すると推計されています。

720万haという面積は、
北海道本島(約780万ha)に迫る規模です。


6.相続登記は義務化されたが、「知られていない」

2024年から相続登記は義務化されました。
正当な理由なく登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

しかし、法務省民事局の調査では、

  • このペナルティについて
    「よく知らない」「全く知らない」人が約78%

という結果が出ています。

制度ができても、
「知らない」「後回し」「話がまとまらない」
この三つが重なると、名義は止まり、問題は固定化します。


7.だからこそ「公正証書遺言」が現実的な解になる

ここまでの統計データを整理すると、流れは明確です。

  1. 空き家は900万戸を超えている
  2. 使われない空き家が増えている
  3. その多くは相続をきっかけに発生している
  4. 相続前対策の有無で放置率が大きく変わる
  5. 放置の延長線上に所有者不明土地がある

この状況で、
家庭レベルでできる最も確実性の高い対策は何か。

それが、
「誰が、どの不動産を引き継ぐのか」を法的に確定させる
公正証書遺言
です。

公正証書遺言は、

  • 遺産分割協議がまとまらず止まるリスクを減らし
  • 相続登記を進めやすくし
  • 「決めきれなかった家」を生まない

という点で、
単なる家族内トラブル対策にとどまらず、
空き家・所有者不明土地を増やさないための予防策でもあります。


まとめ:遺言は「家庭の備え」から「社会的インフラ」へ

空き家や所有者不明土地の問題は、
遠いどこかの話ではありません。

多くの場合、
「決めないまま相続が始まった」ことが出発点です。

だからこそ、相続が起きる前に、

  • 家族で話し合い
  • 不動産の承継者を決め
  • 公正証書遺言という形で残す

この一手が、家族にとっても、地域にとっても、
最も現実的で穏やかな解決策になります。


ご相談について

「まだ元気だから」「うちは揉めないから」
そう思っている段階こそ、実は一番スムーズに整えられます。

不動産が絡む場合、
遺言の書き方ひとつで結果は大きく変わります。
必要であれば、現状整理だけでもお手伝いします。


出典

  • 総務省「令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)」
  • 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」
  • 所有者不明土地問題研究会 最終報告概要(平成30年)
  • 法務省民事局「相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度調査」

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