こんにちは。
兵庫県・阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
相続・遺言・成年後見など、いわゆる終活周りのご相談をお受けしています。
今回は、感覚論ではなく国の公式統計データをもとに、
- なぜ空き家や所有者不明土地が増え続けるのか
- その出発点がどこにあるのか
- 私たち一人ひとりにできる現実的な対策は何か
について整理します。
結論から言えば、
空き家・所有者不明土地問題の多くは「相続の場面」で生まれ、
その予防策として最も確実なのが「公正証書遺言」です。
1.空き家は「すでに900万戸」を超えている
総務省が公表した
「令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)」によると、
- 全国の空き家数:900万2千戸
- 空き家率:13.8%(過去最高)
とされています。
これは一時的な増加ではなく、長期的に右肩上がりで増え続けている数字です。
2.問題なのは「使う予定も、売る予定もない空き家」
空き家には、賃貸用・売却用・別荘など様々な種類があります。
しかし、特に問題とされているのが、
「賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家」です。
同調査では、
- このタイプの空き家が 385万6千戸
- 2018年調査から 36万9千戸増加
していることが示されています。
さらに建て方別に見ると、
- 一戸建て空き家:352万3千戸
- そのうち 80.9% が
「賃貸・売却・別荘の予定がない空き家」
となっています。
これは統計的に見ても、
「親が住んでいた家を相続したが、
誰がどうするか決まらないまま、使われなくなっている」
という状態が、日本全国で広がっていることを示しています。
3.空き家の“入口”にあるのは「相続」
では、空き家はどのような経緯で発生しているのでしょうか。
国土交通省の
「令和6年空き家所有者実態調査」によると、
- 空き家の取得経緯の 57.9% が「相続」
- 空き家になった直接のきっかけの 58.3% が「元の所有者の死亡」
となっています。
つまり、
空き家問題の多くは「相続が始まる瞬間」に生まれているのです。
4.「相続前の対策」が、放置されるかどうかを分ける
同じ調査では、非常に重要なデータも示されています。
相続前に、
- 家族で話し合いをしていた
- 遺言を作成していた
- 何らかの準備をしていた
こうした「対策」があったかどうかで、その後の空き家の扱いに大きな差が出ています。
具体的には、
- 対策をしていなかった空き家
→ 空き家のまま所有し続けた割合:45.1% - 対策をしていた空き家
→ 同割合:29.4%
となっており、
対策をしていなかった場合は、約1.5倍の確率で空き家が放置されていることが分かります 。
5.放置の先にあるのが「所有者不明土地」
空き家が放置され、相続登記が行われないまま時間が経つと、
次に起きるのが「所有者不明土地」です。
所有者不明土地問題研究会(増田寛也座長)の最終報告では、
- 2016年時点:約 410万ha
- 対策を取らない場合、2040年には約 720万ha
まで拡大すると推計されています。
720万haという面積は、
北海道本島(約780万ha)に迫る規模です。
6.相続登記は義務化されたが、「知られていない」
2024年から相続登記は義務化されました。
正当な理由なく登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
しかし、法務省民事局の調査では、
- このペナルティについて
「よく知らない」「全く知らない」人が約78%
という結果が出ています。
制度ができても、
「知らない」「後回し」「話がまとまらない」
この三つが重なると、名義は止まり、問題は固定化します。
7.だからこそ「公正証書遺言」が現実的な解になる
ここまでの統計データを整理すると、流れは明確です。
- 空き家は900万戸を超えている
- 使われない空き家が増えている
- その多くは相続をきっかけに発生している
- 相続前対策の有無で放置率が大きく変わる
- 放置の延長線上に所有者不明土地がある
この状況で、
家庭レベルでできる最も確実性の高い対策は何か。
それが、
「誰が、どの不動産を引き継ぐのか」を法的に確定させる
公正証書遺言です。
公正証書遺言は、
- 遺産分割協議がまとまらず止まるリスクを減らし
- 相続登記を進めやすくし
- 「決めきれなかった家」を生まない
という点で、
単なる家族内トラブル対策にとどまらず、
空き家・所有者不明土地を増やさないための予防策でもあります。
まとめ:遺言は「家庭の備え」から「社会的インフラ」へ
空き家や所有者不明土地の問題は、
遠いどこかの話ではありません。
多くの場合、
「決めないまま相続が始まった」ことが出発点です。
だからこそ、相続が起きる前に、
- 家族で話し合い
- 不動産の承継者を決め
- 公正証書遺言という形で残す
この一手が、家族にとっても、地域にとっても、
最も現実的で穏やかな解決策になります。
ご相談について
「まだ元気だから」「うちは揉めないから」
そう思っている段階こそ、実は一番スムーズに整えられます。
不動産が絡む場合、
遺言の書き方ひとつで結果は大きく変わります。
必要であれば、現状整理だけでもお手伝いします。
出典
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)」
- 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」
- 所有者不明土地問題研究会 最終報告概要(平成30年)
- 法務省民事局「相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度調査」


