#56 相続で揉めるのは「お金持ち」ではありません ―司法統計が示す現実

01相続・遺言

こんにちは。
阪神間を中心に、相続・遺言のご相談を日々受けている行政書士の小田晃司です。
相続の相談をしていると、こんな言葉をよく耳にします。

「うちは財産なんて大したことないから、揉めないと思うんです」

しかし、この認識は統計データによって完全に否定されています。

今回は、最高裁判所が公表している「令和4年司法統計年報(家事編)」をもとに、
「相続トラブルの本当の姿」を数字で見ていきます。


相続トラブルの現実

実は「普通の家庭」で起きている

家庭裁判所で扱われた遺産分割事件のうち、
認容または調停が成立した件数は 6,858件

この内訳を遺産額別に見ると、驚くべき結果が出ています。

遺産5,000万円以下が全体の約76%

5,000万円以下のケースは 5,231件
全体の約4分の3を占めています。

遺産1,000万円以下でも約33%

さらに注目すべきはここです。
遺産1,000万円以下が2,297件

つまり、

相続トラブルの約3件に1件は、遺産1,000万円以下の家庭で起きている

ということになります。

「相続で揉めるのは資産家だけ」というイメージが、
完全な思い込みであることが分かります。


なぜ「お金持ちではない家庭」ほど揉めやすいのか

この背景には、はっきりした理由があります。

① 遺産が「分けにくい」

少額の相続では、

  • 預貯金はわずか

  • 主な財産は「自宅不動産のみ」

というケースが非常に多くなります。

現金が十分にあれば代償金で調整できますが、
それができないため、

  • 売るのか

  • 誰が住むのか

  • 誰がいくら我慢するのか

といった問題が噴き出し、感情的な対立に発展します。


② 「うちは大丈夫」という油断

高額資産家ほど、生前から

  • 遺言書の作成

  • 専門家への相談

を行っています。

一方で一般家庭では、

「揉めるほどの財産じゃない」

と対策をしないまま相続が発生し、
結果として家族同士が裁判所で争うことになるのです。


結論:相続対策は「一部の人」のものではない

司法統計が示しているのは、明確な事実です。

相続紛争の主戦場は、1,000万円〜5,000万円の層

つまり、
ごく普通の家庭こそ、相続対策が必要なのです。

遺言書は「お金持ちのためのもの」ではありません。
家族を争わせないための、最後のメッセージです。

もし、

  • 子どもが複数いる

  • 自宅不動産がある

  • 「うちは大丈夫」と思っている

どれか一つでも当てはまるなら、
一度立ち止まって考えてみてください。


出典
令和4年 司法統計年報3 家事編(最高裁判所事務総局)
第52表「遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(分割をしないを除く)」

動画解説

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