#36 家族信託と任意後見制度の違い 〜信頼して任せる仕組みか、自分で契約して備える仕組みか〜

02後見制度(法定後見・任意後見)

こんにちは。
神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
前回の記事では、「成年後見人と任意後見人の違い」についてお伝えしました。
今回は、もう一歩踏み込んで「家族信託」と「任意後見制度」の違いを解説します。

どちらも「判断能力があるうちに」準備できる制度ですが、目的や活用の仕方が異なります。
老後の備えを考えるうえで、両者の違いを理解しておくことはとても大切です。


1. どちらも“将来に備える制度”

まず共通点を確認しましょう。
家族信託も任意後見制度も、本人がまだ元気なうちに契約を結び、
将来、判断能力が低下したときに備える仕組みです。

ただし──

  • 家族信託は「財産管理を家族に任せる契約」
  • 任意後見は「生活・身上監護を中心に任せる契約」

という目的の違いがあります。

つまり、どんな内容を誰に託したいかによって、選ぶべき制度が変わります。


2. 家族信託とは

家族信託は、財産の管理や運用を家族に託す仕組みです。
委託者(親など)が、信頼できる受託者(子など)に自分の財産を預け、
将来のために柔軟に管理してもらうことができます。

たとえば──

  • 認知症になっても、子が親名義の不動産を売却・修繕できるようにしたい
  • 家族に迷惑をかけず、財産を計画的に使ってほしい
  • 将来の相続トラブルを防ぎたい

このような希望に対応できるのが家族信託です。
契約内容を自由に設計でき、裁判所の関与はありません。


3. 任意後見制度とは

任意後見制度は、将来、判断能力が低下したときに、生活面や契約行為をサポートしてもらう制度です。
本人が元気なうちに、公証役場で「任意後見契約公正証書」を作成し、
信頼できる人を「任意後見人」として指定しておきます。

契約が発効するのは、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した後です。

主に以下のような支援を任せることができます。

  • 銀行や年金の手続き
  • 介護・医療契約の手続き
  • 施設入所や生活費の管理

つまり、任意後見制度は生活全般を支える制度であり、財産の運用や相続対策までは範囲外です。


4. 両制度の違いを整理

比較項目 家族信託 任意後見制度
契約の目的 財産の管理・運用・承継 生活・医療・介護などの支援
開始のタイミング 契約締結後すぐ(即効性あり) 判断能力が低下し、裁判所が監督人を選任した後
裁判所の関与 なし あり(監督人を選任)
財産の名義 受託者に移す(信託登記) 本人のまま
柔軟性 高い(契約内容を自由に設計可能) 一定の範囲で制限あり
主な対象 不動産・預貯金・事業承継など 生活費管理・介護・医療など
設計の自由度 高い(家族で完結できる) 中程度(家庭裁判所の監督下)

5. 両方を組み合わせると、さらに安心

実は、家族信託と任意後見制度は対立する制度ではなく、補い合う関係にあります。

  • 財産管理は「家族信託」で柔軟に
  • 生活支援は「任意後見」で安心に

このように、両制度を併用することで、財産と生活の両方をカバーすることができます。

たとえば、
「家族信託で不動産や預金を託しつつ、任意後見契約で介護や医療の判断を信頼できる人に任せる」
といった設計が可能です。


6. 行政書士としてのサポート

行政書士は、

  • 家族信託契約書の原案作成
  • 任意後見契約の設計支援
  • 公証役場での手続き同行
    などを通じて、安心できる仕組みづくりをお手伝いします。

特に「家族信託+任意後見+遺言書」を組み合わせることで、
判断能力が低下しても、亡くなった後も、一貫して家族の想いを守る仕組みを整えることができます。


7. まとめ

家族信託と任意後見制度は、どちらも“元気なうちに備える”ための制度です。
しかし、その役割は異なります。

  • 家族信託:財産を柔軟に動かすための仕組み
  • 任意後見:生活や医療を支えるための仕組み

どちらか一方では足りないことも多く、両立が理想的です。
ご自身やご家族に合った制度を組み合わせて、将来の不安を少しでも減らしていきましょう。


 

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