#34 家族信託と成年後見制度の違い 〜判断できるうちに備えるか、判断できなくなってから守られるか〜

02後見制度(法定後見・任意後見)

こんにちは。神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
近年ご相談が増えている「相続・遺言・家族信託」など、地域に根ざしたサポートを行っています。


1. なぜ「財産管理の備え」が必要なのか

高齢化が進む中で、「親が認知症になって不動産が売れない」「銀行口座が凍結された」という相談をよく受けます。
これらは、判断能力があるうちにできることと、判断能力を失ってからできることの違いから生じる問題です。

この2つのタイミングの間にあるのが、家族信託成年後見制度です。
どちらも財産を守るための制度ですが、仕組みと目的が大きく異なります。


2. 成年後見制度とは

成年後見制度は、すでに認知症などで判断能力が低下した方を保護するための制度です。
家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が「後見人」を選任します。
選ばれた後見人が、本人に代わって財産管理や生活支援を行う仕組みです。

ただし、後見人は家庭裁判所の監督下に置かれ、自由に財産を動かすことはできません。
不動産の売却や預金の引き出し、契約行為などには裁判所の許可が必要になることもあります。
また、後見人には家族ではなく、弁護士や司法書士などの第三者が選ばれるケースも多いのが実情です。

つまり、成年後見制度は「裁判所の関与のもとで、すでに判断できない人を保護する仕組み」なのです。


3. 家族信託とは

一方、家族信託は判断能力があるうちに結ぶ「家族間の契約」です。
「判断はできるけれど、手続きや管理が難しくなってきた」という段階で、
親(委託者)が信頼できる子(受託者)に財産の管理を任せます。

不動産の場合は、登記上の名義を受託者に移します。
ただし、経済的な所有者(受益者)は親本人のままで、
受託者は“預かり管理人”の立場で財産を扱います。

このように、契約の内容を自由に設計できる柔軟性こそが家族信託の大きな特徴です。
裁判所の関与もなく、家族で完結できる制度といえます。


4. 両制度の主な違い

比較項目 家族信託 成年後見制度
開始のタイミング 判断能力があるうち 判断能力を失ってから
制度の形 家族間の契約(信託契約書) 家庭裁判所の審判による開始
誰が決めるか 本人と家族 家庭裁判所
管理する人 受託者(家族など) 後見人(家族または専門職)
裁判所の関与 なし 常にあり(監督・報告義務)
財産の名義 受託者に移す(信託登記) 本人のまま
柔軟性 高い(契約で自由に設定可能) 低い(裁判所の許可制)
主な目的 家族で財産を動かしやすくする 判断できない人を法的に保護する

5. 最大の違いは「誰の意思で動くか」

私が現場で最も大きな違いだと感じるのは、“誰の意思で制度が動くか”という点です。

家族信託は、本人が元気なうちに自分の意思で家族に託す制度です。
一方、成年後見制度は、本人が判断できなくなってから、裁判所が後見人を選び、法的に保護する制度です。

言い換えると、

家族信託は「自分で決めて家族に任せる」制度、
成年後見制度は「裁判所が決めて後見人に任せる」制度です。

どちらが良い悪いではなく、判断できるタイミングによって選べる制度が変わるということを理解しておくことが大切です。


6. 行政書士としての視点

家族信託は、柔軟に財産を管理したい方や、不動産をお持ちの方に特に向いています。
成年後見制度は、すでに判断能力を失った方を保護するための最後の砦です。

この二つの制度は対立するものではなく、**「準備」と「保護」**という役割を分担しています。
元気なうちに自分で決めるのか、それとも判断できなくなってから裁判所に任せるのか──
その違いを知ることが、安心の第一歩です。


7. まとめ

家族信託と成年後見制度は、どちらも「財産を守る制度」ですが、
成り立ちも目的もまったく異なります。

  • 家族信託は、判断能力があるうちに「自分の意思」で備える制度です。
  • 成年後見制度は、判断能力を失ってから「裁判所の判断」で守られる制度です。

だからこそ、“今のうち”に準備を始めることが最も大切です。
自分の意思を残すために、家族の安心のために、早めに仕組みを整えておきましょう。


📘 次回の記事では、「成年後見人と任意後見人の違い」について、
それぞれの役割や開始時期、実務上の運用の違いを詳しく解説します。

 

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