こんにちは。神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
相続・遺言を中心に地域に根ざした終活のサポートを行っています。
相続で田畑や山林を引き継いだものの、
・どう管理したらいいか分からない
・誰も使わないまま放置している
・売れないからそのままになっている
というご相談をよくいただきます。
空き家問題と同じく、田畑・山林は“放置がもっとも危険な不動産”です。農地法の制限、境界の曖昧さ、維持管理の負担が重なり、相続後に大きな問題へ発展してしまうケースが増えています。
この記事では、田畑・山林を相続したときに知っておきたいポイントや、トラブルを防ぐために必要な対策について整理してお伝えします。
1. 田畑・山林の相続でよく起きる悩み
田畑・山林は相続したまま放置されやすい財産です。実際には次のような課題が多くあります。
・管理する人がいない
・草木が伸びて近隣から苦情
・境界や地番が古く不明確
・山林は倒木・害獣などのリスク
・公図・地籍図が古く調査に時間がかかる
・農地は買い手がつきにくい
「使っていないのに維持管理だけ必要」というのが、よくある悩みです。
2. 固定資産税は“少額”でも、問題の本質は別にある
田畑・山林の固定資産税は、高額ではありません。
農地は年間数千円〜数万円、山林は年間数百〜数千円というケースが多いです。
しかし、問題は税金ではありません。
本質的な負担は「管理できないこと」です。
・雑草の越境
・害獣の温床
・倒木による事故
・境界不明によるトラブル
・山林は下草刈り・間伐・林道管理が必要
固定資産税よりも、管理負担のほうが圧倒的に重く、放置するほどトラブルの可能性が高くなります。
3. 農地・山林に特有の法的リスク
農地や山林には、一般の住宅地にはない制限や問題があります。
● 農地法による売却制限
農地は誰でも自由に売れるものではなく、許可や届出が必要です。
● 山林は境界問題が起こりやすい
古い山林ほど境界が曖昧で、隣地の所有者が不明なケースもあります。
● 相続登記をしないと所有者不明土地になる
これは最も重要なポイントです。
4. 日本の“所有者不明土地”は全国で約24%(出典:国土交通省・法務省)
国の調査(国土交通省「所有者不明土地問題研究会」、所有者不明土地関係省庁連絡会議)によると、
・日本全国の土地の約24%が「所有者不明土地」
・面積ベースでは2016年時点で約410万ヘクタール
・九州本島の面積(約367万ヘクタール)を上回る規模
九州ひとつ分以上の土地が「誰のものか分からない」という実態です。
みなさん、信じられますか?これが現在の日本の現実です。
さらに、所有者不明土地になっている原因の約63%は「相続登記がされていないこと」です。
相続手続きを後回しにすると、数十年後にはこうした大きな問題につながってしまうのです。
5. 相続土地国庫帰属制度(“帰属制度”)
2023年(令和5年)に始まった制度で、条件が揃えば相続した土地を国に引き取ってもらうことができます。
ただし、実際には審査が非常に厳しく、
・境界不明
・権利関係が複雑
・管理が困難
・農地法の制限がある
などの場合は不適格となります。
さらに引き取ってもらうのは無料ではありません。費用がかかります。
「誰でも気軽に土地を手放せる制度」ではありませんので注意が必要です。
6. 相続した田畑・山林の現実的な対処法
相続した山林や田畑を放置しないためには、次の手順を踏むことが現実的です。
- 相続登記を必ず行う(2024年から義務化)
- 土地の地番・現況を把握する
- 農地の場合は農地法の確認、農地バンクの活用
- 山林の場合は境界調査や管理業者の活用
- 売れない場合は管理委託を検討
- 国庫帰属制度が利用できるか確認
7. 自治体も深刻に困っている現実 ― 所有者不明土地は地域運営を妨げる
自治体としても、誰の土地か分からない山林や田畑が増えることは極めて大きな問題です。
・災害時の倒木処理ができない
・農道や山道の整備ができない
・土砂災害の危険があっても対策が打てない
・地域再開発や公共事業が進まない
・防犯・防災・環境対策が遅れる
行政が介入したくても、所有者が分からない土地には手を出せません。
つまり、所有者不明土地が増えるほど、地域の安全性や生活インフラの維持が難しくなっていくのです。
自治体は自治体で今後ますます困る状況が増えるため、
土地の所有者を明確にしておくことは「地域全体の利益」にもつながります。
8. 公正証書遺言は、家族のためにも地域のためにも必要
田畑・山林のように管理が難しい不動産ほど、遺言の必要性は高まります。
公正証書遺言を作成することで、
・誰が土地を管理・承継するのかを明確にできる
・トラブルを未然に防げる
・相続登記がスムーズに進む
・共有状態や放置を防げる
・将来の所有者不明土地化を防止できる
という大きなメリットがあります。
これは家族のためだけではなく、地域・自治体のためにも重要なことです。
■ まとめ:不動産は“誰のものか分かる状態”で残すことが大切です
田畑・山林は固定資産税こそ少額ですが、管理負担・処分困難・法律的リスクが大きい財産です。
そして相続登記を放置すれば、将来“所有者不明土地”となり、
家族だけでなく地域や自治体全体を困らせてしまいます。
そのために必要なのは、
・相続登記を必ず行う
・土地の現況を把握する
・公正証書遺言で承継者を明確にする
という3つの行動です。
田畑・山林の相続でお悩みの方、
遺言を準備したい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
地域に根ざす行政書士として、丁寧にサポートいたします。


