#47 【相続シリーズ②】相続で揉めるポイント(争族のリアル)

01相続・遺言

こんにちは。
神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西・猪名川など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
公正証書遺言書、相続、家族信託、死後事務委任契約など、老後と相続の実務支援を専門にしています。


今回のテーマ

シリーズ②:相続で揉めるポイント(争族のリアル)です。

前回(シリーズ①)では、
✔ 相続が発生すると約30%の家庭で意見が割れること(法務省/司法統計より)
✔ 特に不動産の相続はトラブル率が最も高いこと
を解説しました。

今回のテーマは、相続実務で非常に多い 「とりあえず兄弟の共有名義」 の落とし穴です。


1. なぜ「共有名義」はトラブルの温床なのか?

国土交通省の調査(令和5年版土地白書)によれば、
相続不動産の約38%が「共有状態」 になっています。
(※「土地基本調査」より)

共有が選ばれやすい理由はシンプルです:

  • 相続人が今も住んでいるから
  • 売りたくない
  • 代償金を払う余裕がない
  • とりあえず揉めないように…

確かに“その瞬間”は穏やかに収まります。しかし、行政書士として多くの相談を受ける中で、次の現実があります。


2. 【事実】共有名義は「時間が経つほど崩壊する」

共有者が増えるほど不動産は動かなくなります。

✔ 全員の同意が必要

売却・賃貸・リフォーム・担保設定など、すべて全員一致 が必要。

✔ 高齢化が進む

相続人が70代になると、判断能力の問題、家庭裁判所での後見手続きが必要になるケースが一気に増えます。

✔ 二次相続で“枝分かれ”

兄弟3人 ⇒ 子ども6人 ⇒ 孫9人
というように、意思決定者は増える一方。

➡ 最終的には「誰も管理できない不動産」が完成します。

国交省の調査(令和5年 空き家所有者実態調査)では、
空き家の約28.7%が“相続に伴う権利関係の複雑さ”を背景に放置されている
という結果も出ています。


3. それでも“共有名義を選ぶ人”が多い理由

行政書士として現場でよく出会う典型例:

  • 長男が実家に住んでいる
  • 次男・長女も「売れ」とは言いづらい
  • 長男に代償金を払う余裕もない
  • とりあえず全員名義にして、将来考えよう…

これは確かに「その場の平和」は保てます。

しかし、統計から導かれる答えは
10年後・20年後、ほぼ問題になります。

ですので、共有名義を選ぶなら “仮の姿” と認識し、

👉 できるだけ早く誰か一人の名義に整理する
👉 最低でも方向性だけは兄弟で決めておく

この2つは必須です。


4. 生前対策としての「家族信託」について

— 業界が推すほど万能ではない —

ここは、私の現場感を率直に書きます。

✔ 家族信託は確かに便利

  • 認知症対策になる
  • 共有のまま意思決定をスムーズにできる
  • 売却や運用も信託契約で可能

しかし…

✔ 実務の現場では「本当に必要な家族」は多くない

これは私の感想に過ぎませんが、
「この家に家族信託を入れるべきか?」がピンと来ないケースが多い
と感じています。

理由はシンプルです。

  • 公正証書遺言と名義整理で十分な家庭が多い
  • 信託契約は手間もコストも大きい
  • 財産を託す人間関係が曖昧な場合は逆に危険

つまり私は、
「絶対に家族信託を使うべきです!」とは言いません。

必要なのは、あくまでこういうケースです:

家族信託が適しているのは…

  • アパートや複数不動産を運用している
  • 本人が認知症になると確実に詰む
  • 相続人が多く、意思決定が遅れそう
  • 次世代への承継計画が明確

➡ こういう“明確な理由”がある場合のみ提案します。


5. 遺言書やメモ書きの「効力」について

— ここを誤解している人が非常に多い —

■ ① メモ書きのような遺言がある場合

結論:
法的な遺言書としては効力が弱いが、家族間協議の材料にはなる。

実務では非常に多いです。

  • ノートに走り書き
  • カレンダーの裏にメモ
  • 「長男に土地を」という一言だけ

これらは形式不備で
遺言としては無効扱いになる可能性が高いですが、

遺産分割協議の中で
「お父さんはこう考えていたらしい」
という“意向の確認材料”には使えます。

そして最終的には:

👉 相続人全員が合意した内容で遺産分割協議書を作成すればOK
👉 メモ書きと違う分配にしても法律上問題なし

これは法律(民法第907条)が根拠です。


■ ② 自筆証書遺言がある場合

有効/無効を分けるポイントは次の3つ:

  • 全文が自筆である
  • 日付がある
  • 署名押印がある

これを満たさないと 無効リスクが高い。

さらに問題なのは…

✔ 法務局に預けていない場合、
家庭裁判所の検認が必須で1〜2か月かかる。

✔ 財産目録をパソコン作成した場合は、
すべてに署名押印が必要。

✔ 遺言内容が曖昧なケースも多い
→ 解釈で揉める典型例になります。


■ ③ 公正証書遺言がある場合(最強の形)

行政書士として一番おすすめするのはこれです。

  • 検認不要(すぐ使える)
  • 公証人が法的にチェック
  • 紛失・改ざんの心配なし
  • 相続手続きが一瞬で進む

特に不動産がある家庭では
比較にならないほどラクです。


6. 現実的なベスト対策

あなたの家庭に本当に必要なのは、
難しい制度や高額な仕組みではありません。

私は常に次の3つをまず整えることを提案します。


✔ ① 公正証書遺言の作成

➡ 不動産がある家庭は“絶対に必要”。

✔ ② 共有名義を長期化させない

➡ 仮に共有にしても、数年以内に誰か一人に整理

✔ ③ 方向性だけは生前に家族で話しておく

➡ 一度話しておくだけで相続の9割は片付きます


7. まとめ

— “共有名義のまま放置”が空き家問題を生む —

  • 共有名義は時間が経つほど危険
  • メモ書き遺言でも協議の材料にはなる
  • 公正証書遺言が一番確実
  • 家族信託は“必要な人だけが使う制度”
  • 最も大事なのは「早めの方向性決定」

不動産の相続は、必ず“家族の未来”に関わります。
ご家族の状況に合わせて、最適な方法を一緒に考えていきましょう。


次回は

シリーズ③(実家(不動産)をどうするか:売却/代償分割/住み続ける場合の選択肢)

をお届けします。

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