こんにちは。神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西・猪名川など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
終活(相続・遺言・後見)など、地域に根ざしたサポートを行っています。
近年、「空き家問題」や「所有者不明土地」という言葉をニュースで耳にする機会が増えいます。
実際、近所を散歩していても「あの家、ずっと空き家だなあ」と思うことが皆さんにもあるのではないでしょうか。日本では空き家が年々増加しており、所有者が分からない土地も深刻な社会問題となっています。
国土交通省の調査では、所有者不明土地は410万ヘクタール、九州本島を超える規模とも言われています。
しかし、私は相続や遺言の現場に関わる中で、これらの問題の根本原因は非常にシンプルだと感じています。
それは、
「相続の準備がされていない」
ということです。
そして、その予防策として極めて有効なのが「公正証書遺言」だと考えています。
今日は、なぜ公正証書遺言が空き家・所有者不明土地問題の“予防”につながるのかを、実務的な視点から整理してみたいと思います。
空き家・所有者不明土地は“突然”生まれるわけではない
空き家や所有者不明土地は、ある日突然発生するわけではありません。
多くの場合、
- 相続人同士で話し合いがまとまらない
- 誰が引き継ぐのか決まらない
- 遠方に住んでいて管理できない
- 相続登記を放置する
こうした“小さな放置”の積み重ねによって発生します。
さらに怖いのは、そのまま次の相続が起きることです。
例えば、
父が亡くなる
↓
相続登記をしない
↓
子ども世代でさらに相続発生
↓
相続人が10人、20人に増える
というケースは、実際に珍しくありません。
こうなると、もう誰が責任を持つのか分からなくなってしまいます。
最大の原因は「遺産分割協議」が止まること
実務上、最も多いのは「遺産分割協議」が止まってしまうケースです。
- 一人だけ連絡が取れない
- 仲が悪い
- 話し合いをしたくない
- 誰も不動産を欲しがらない
これで、相続登記は進まなくなります。
2024年4月から相続登記が義務化されましたが、実際には「やりたくても進まない」というケースも少なくありません。
つまり、問題は制度だけではなく、“意思決定が止まること”にあるのです。
公正証書遺言が強い理由①
「遺産分割協議」を回避できる
ここで非常に重要になるのが、公正証書遺言です。
公正証書遺言があると、
「この不動産は長男へ」
「この土地は売却して分配する」
など、財産の承継先を事前に明確にできます。
その結果、相続人全員での遺産分割協議を経なくても、相続登記を進めやすくなります。
つまり、
“話し合いが止まる”
という最大のリスクを、事前に大きく減らすことができるのです。
公正証書遺言が強い理由②
検認不要で、すぐ動ける
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります。
しかし、公正証書遺言は公証役場で作成されるため、検認が不要です。
つまり、
- すぐに登記に動ける
- 売却できる
- 管理を始められる
というスピード感があります。
相続では、「熱量があるうちに動く」というのは本当に重要です。
時間が経てば経つほど、
「また今度でいいか」
となり、結果として放置につながっていきます。
公正証書遺言が強い理由③
“管理責任”を明確にできる
所有者不明土地の背景には、
「誰が管理するのか分からない」
という問題があります。
固定資産税、草刈り、近隣対応、建物管理――。
不動産は、持っているだけで責任が発生します。
公正証書遺言で、
- 誰に引き継ぐのか
- なぜその人に託すのか
- どう管理してほしいのか
を明確にしておくことは、単なる財産分配ではありません。
“責任の承継”
をはっきりさせる行為でもあるのです。
また、
「この空き家の維持費として預金も合わせて残す」
という設計を行うケースもあります。
こうした細かな設計ができるのも、公正証書遺言の大きなメリットです。
「うちは仲が良いから大丈夫」は危ない
相続相談の現場でよく聞く言葉があります。
「うちは家族仲が良いから揉めません」
もちろん、それは素晴らしいことです。
ただ、実際には、
- 配偶者が亡くなる
- 子ども世代の生活環境が変わる
- 認知症になる
- 次の相続が起きる
ことで状況は大きく変わります。
そして何より、“誰も悪気なく放置してしまう”ケースが非常に多いのです。
最後に
予防に勝る対策はない
一度、所有者不明土地になってしまうと、元に戻すには膨大な時間と費用がかかります。
場合によっては、
- 戸籍調査
- 相続人調査
- 家庭裁判所手続
- 不在者財産管理人
などが必要になることもあります。
そうなる前にできること。
それが、公正証書遺言です。
遺言は、「財産をどう分けるか」だけではありません。
- 家族への最後の責任
- 地域への責任
- 次世代への責任
でもあると、私は思っています。
空き家や所有者不明土地を増やさないためにも、“今のうちに準備する”という視点を、多くの方に持っていただければと思います。


