#33 家族信託③ 公正証書と専門家サポート編──安心の「契約」に仕上げるまで

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こんにちは。行政書士の小田晃司です。
前回の「家族信託② 安心の仕組み編」では、信託監督人などの“見守りの仕組み”や、公正証書の重要性についてお話ししました。

最終回となる今回は、家族信託を実際に公正証書で作成する手順と費用、そして行政書士がどのようにサポートできるのかについて、実務の流れに沿って解説します。


公正証書で作る家族信託──なぜここまで重要なのか?

家族信託契約は、紙にサインして終わりではありません。
せっかく信頼をベースに作る契約だからこそ、「誰が読んでも、法的に確実で、安心できる形」にしておく必要があります。

その最も確実な方法が、公正証書による作成です。


公正証書にする3つの大きなメリット

  1. 法的効力が強く、安心できる
    公証人(元裁判官や検察官など)が契約内容を確認し、法的に有効な文面を保証してくれます。
  2. 社会的信用が高い
    銀行や不動産会社も公正証書を前提に手続きを進めるため、信託の実行がスムーズになります。
  3. 改ざん・紛失の心配がない
    原本が公証役場に保管されるため、紛失や書き換えのリスクがなく、将来のトラブルを防げます。

公正証書家族信託の作成手順

家族信託を契約書として作るには、大きく分けて6つのステップがあります。

ステップ 内容 主な関係者
① ヒアリング・設計 財産の内容、目的、関係者の希望を整理 行政書士・家族
② 信託スキームの構築 誰が受託者・受益者になるかを決め、流れを図式化 行政書士
③ 契約書ドラフト作成 行政書士が信託契約書の文案を作成 行政書士
④ 公証役場との事前調整 内容確認・手数料見積もり・日程調整 行政書士+公証人
⑤ 公正証書作成・署名押印 委託者・受託者・公証人が立会いのもと契約締結 公証役場
⑥ 信託登記・実務運用 不動産信託登記・口座開設・管理運用の開始 行政書士・司法書士

行政書士が果たす役割

行政書士は、単なる「書類作成者」ではありません。
家族信託全体の設計士であり、ナビゲーターとして次のような支援を行います。

  • ご家族の状況や財産構成をもとに信託スキームを設計します
  • 契約書・付属書類(財産目録など)を作成します
  • 公証役場とのやり取りや日程調整を行います
  • 信託後の運用や報告体制の構築を支援します
  • 遺言・後見・保険を組み合わせたトータル設計を行います

家族信託だけでなく、遺言や後見、保険をどう組み合わせるかまでを考え、
ご家族に最適な“安心の仕組み”を設計するのが行政書士の大切な役割です。


費用の目安(一般的な実務水準)

家族信託は内容によって大きく異なりますが、一般的な費用感は次のとおりです。

項目 内容 費用の目安(税別)
信託設計・契約書作成 ヒアリング・文案作成・公証準備 150,000〜250,000円
公証役場手数料 信託財産額に応じて変動 約50,000〜100,000円前後
登記関連費用(不動産がある場合) 司法書士報酬+登録免許税 約100,000円〜
合計目安 一般的な信託1件 約30〜45万円程度

※信託財産が大きい場合や、複数の不動産を含む場合は別途お見積もりとなります。


家族信託に適しているケース

ケース 信託が有効な理由
親が高齢で財産管理を子に任せたい 後見制度より柔軟で、家族が管理しやすい
認知症になる前に管理の準備をしたい 判断能力があるうちに契約できる
不動産を売却・運用して生活資金を確保したい 委託者の意向どおりに受託者が実行できる
障がいのある子に財産を残したい 子の生活を支えるための信託管理が可能
家族間で相続トラブルを避けたい 契約で分担・役割を明確化できる

家族信託と遺言・保険・後見制度の連携

家族信託は「万能」ではありません。
信託は生前の管理を支える仕組みであり、死後の分配には遺言の活用が欠かせません。

さらに、保険を活用すれば「お金を残す仕組み」が作れ、
後見制度は「判断力を失ってからの補助」として機能します。

これらを組み合わせることで、生前から死後まで一貫した安心設計が可能になります。
行政書士として、これらを一体的にデザインする「終活設計パートナー」として寄り添います。


公正証書作成の流れ(実務イメージ)

  1. 初回相談・ヒアリング(無料)
    財産の内容、希望、家族構成を確認します。
  2. 設計提案・見積提示
    最適なスキームと費用を提示し、合意後に着手します。
  3. 契約書案の作成と修正
    ご家族と確認しながら文案を整えます。
  4. 公証役場との調整
    公証人との事前打ち合わせや書類確認を行います。
  5. 公正証書作成・署名押印
    委託者・受託者が公証役場で契約を締結します。
  6. 信託登記・運用開始
    不動産登記・口座開設・運用開始までをサポートします。

まとめ──信頼を“契約”に変え、安心を未来へ

家族信託は「信頼できる家族に財産を託す」ための制度ですが、
その信頼を社会的に通用する形に変えるのが公正証書です。

行政書士が間に入ることで、制度を正しく理解し、家族の想いに沿った設計を実現することができます。


📘 シリーズまとめ

テーマ 内容
家族信託① 基本構造編 家族信託の仕組みと意義をわかりやすく紹介
家族信託② 安心の仕組み編 信託監督人や公正証書による信頼性の確保
家族信託③ 公正証書と専門家サポート編 実務の手順・費用・行政書士の関わり方

 

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