こんにちは。神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。
公正証書遺言や相続のサポートを中心に、「想いをかたちに残す」お手伝いをしています。
今回は、遺言書を作るときに多くの方が迷われる「遺言執行者」について。
「誰を指定すればいいのか?」「指定しないとどうなるのか?」――実務の現場で感じるポイントを、行政書士の立場からわかりやすく解説します。
遺言執行者とは?まず基本を理解しましょう
遺言執行者の役割
遺言執行者とは、簡単に言うと「遺言の内容を実現する人」です。
遺言者が亡くなったあとに、遺言書に書かれた内容を実際に実行する責任を負います。いわば、遺言実現のプロジェクトマネージャーのような存在です。
具体的に何をするのか
遺言執行者の主な仕事は次のとおりです。
- 相続人への通知:遺言書の内容を相続人に知らせます。
- 相続財産の調査:預貯金・不動産・株式などを調べ、相続財産の調査を行います。
- 預貯金の解約・名義変更:銀行や証券会社での手続きを行います。
- 不動産の名義変更(登記):法務局で登記手続きを行います(司法書士と連携する場合もあります)。
- 遺言内容の実現:遺贈や寄付など、遺言で指定された内容を実行します。
- 相続人への報告:執行の経過や結果を相続人に報告します。
要するに、遺言に書かれたことを確実に実現するために動く人が遺言執行者です。
遺言執行者は必ず必要?指定しなくても大丈夫?
結論から言うと、法律上は必須ではありません。
遺言書に執行者を指定しなくても、手続きは進められます。
指定しなかった場合は?
遺言執行者がいない場合には、
- 相続人全員で協力して遺言内容を実現する、
または - 家庭裁判所に申し立てて執行者を選任してもらう、
という方法になります。
つまり、執行者がいない場合は、残された奥様やご家族などの相続人ご自身が実務を行うことになります。
もし相続人の方が手続きに慣れており、金融機関や法務局での対応も問題なくできる場合には、遺言書に「執行者を置かず、相続人が手続きを行う」と明記しておくことも可能です。
ただし、実際には次のような不安を感じる方が多いです。
- 「銀行や役所の手続きが分からない」
- 「相続人同士での調整が難しい」
- 「平日に動けない」「体力的に難しい」
このような場合には、専門家である行政書士に依頼する方が安心でスムーズです。
私のように、遺言書の作成段階からサポートしている行政書士であれば、内容を把握した上で執行まで一貫して対応できます。結果として、相続人の方の負担を大きく減らすことができます。
執行者がいないと起こりやすいトラブル
- 相続人の一人が非協力的で、手続きが止まってしまう
- 相続人同士が不仲で、「誰がやるか」で揉める
- 銀行・証券会社・法務局などの手続きが複雑で進まない
- 相続人が高齢や遠方に住んでいて対応できない
こうしたケースでは、せっかくの遺言が放置されたり、相続手続きが長期化してしまうことがあります。
執行者を指定しておくメリット
- 手続きがスムーズに進む
- 相続人の負担を大きく減らせる
- トラブルを未然に防げる
- 専門的な手続きを任せられる
- 遺言内容が確実に実現される
実務経験上、執行者を指定しない遺言書は、後で家族が苦労するケースが非常に多いです。
誰が遺言執行者になれるの?
法律上は、成年(18歳以上)で破産者でなければ誰でもなれます。
相続人でも、相続人以外でもかまいません。
ただし、実際には「誰でもいい」わけではありません。
次のような選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
遺言執行者の主な選択肢
① 家族(配偶者や子ども)
メリット
- 費用がかからない
- 家族のことをよく理解している
デメリット
- 手続きが複雑で負担が大きい
- 他の相続人との関係が悪化するおそれ
- 高齢や体調不良で対応できない場合がある
② 友人・知人
メリット
- 第三者的な立場で公平
デメリット
- 専門知識がない
- 責任が重すぎて断られることが多い
- 長期的な対応が難しい
③ 信託銀行などの金融機関
メリット
- 専門性が高く、安心感がある
デメリット
- 費用が非常に高額(最低100万円~、財産の1〜3%程度)
- 小規模な相続だと引き受けてもらえないことも
④ 行政書士などの専門家(おすすめ)
メリット
- 専門知識と実務経験が豊富
- 費用が明確で適正
- 柔軟で親身な対応が可能
- 相続人全員に公平に対応
- 他の専門家(司法書士・税理士など)との連携がスムーズ
デメリット
- 一定の費用はかかる(ただし信託銀行よりはるかに安い)
行政書士に依頼する具体的なメリット
- 相続手続きの専門家
官公署や金融機関での手続きを日常的に行っているため、迅速で正確に対応できます。 - 中立的な立場
家族間の利害関係に左右されず、公平に執行できます。 - 費用が適正
報酬の相場は30万〜50万円程度で、信託銀行の数分の一です。 - 遺言作成時からのサポート
執行を前提に内容を設計できるため、実行しやすい遺言書になります。 - 他士業との連携
司法書士・税理士・弁護士などと連携し、ワンストップで対応します。 - 相続人の負担がゼロに
銀行や役所への対応、書類作成、報告書提出まで全て代行します。 - 遺言者の意思を確実に実現
せっかく作った遺言が放置されることなく、確実に実現されます。
報酬の決め方と記載例
遺言執行者の報酬は、遺言書の中で明記しておくのが一般的です。
支払いは相続財産から行うため、相続人の自己負担はありません。
行政書士の相場
- 基本報酬:30万〜50万円程度
- 財産の規模や手続きの複雑さで変動
信託銀行の場合
- 最低100万円〜
- 財産の1〜3%程度
記載例(定額方式)
第○条 本遺言の遺言執行者として、行政書士 山田太郎を指定する。
第○条 遺言執行者の報酬は金30万円とする。
記載例(割合方式)
遺言執行者の報酬は、相続財産の価額の1%相当額とする。
ただし、最低報酬額を30万円とする。
当事務所では、20万円か相続財産の価額の2%、いずれか多額の方に消費税を加えた額を報酬としています。
複数の執行者を指定できる?
可能ですが、あまりおすすめではありません。
複数人にすると意見の対立や責任の所在があいまいになるため、
信頼できる専門家1名を指定するのが基本です。
ただし、予備的な執行者を指定しておくのは有効です。
第○条 遺言執行者に行政書士 山田太郎を指定する。
同人が就任できないときは、行政書士 佐藤花子を指定する。
実際の執行の流れ(標準3〜6ヶ月)
- 就任:相続発生を確認し、相続人に通知
- 財産調査:預金・不動産・有価証券などを調査し、目録を作成
- 執行準備:必要書類を揃え、段取りを立てる
- 執行:預金解約、不動産登記、遺贈実行、分配など
- 完了報告:報告書・収支計算書を相続人へ提出
こんな場合は特に執行者の指定を!
- 相続人が多い・関係が複雑
- 相続人が高齢または遠方
- 相続人に未成年者がいる
- 不動産や金融資産が多い
- 相続人以外への遺贈がある
- 家族の仲が良くない
- 確実に実行してほしい遺言内容がある
遺言執行者の選び方チェックリスト
- 専門知識があるか
- 中立的で公平か
- 責任感があり健康であるか
- 費用が明確か
- 他の専門家と連携できるか
- 遺言作成段階から信頼関係を築けるか
まとめ:遺言執行者は「保険」です
遺言執行者の指定は、遺言を確実に実現するための保険のようなものです。
法律上は任意ですが、指定しておくことで安心感が大きく変わります。
- 家族が手続きを行うことも可能
- しかし、手続きに不安がある場合は専門家に任せるのが安心
- 行政書士なら適正な費用で、きめ細かく対応可能
- 遺言作成から執行まで一貫サポートできる
せっかく作った遺言が放置されたり、家族が困るようなことがないよう、
信頼できる専門家を遺言執行者に指定しておくことが、家族への最大の思いやりです。
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