#21 遺言書がなかったために起きた、ある家族の話

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こんにちは。行政書士の小田晃司です。
兵庫県の尼崎・神戸・西宮・伊丹・宝塚・川西など、阪神地域を拠点に活動しながら、全国からご相談をいただいています。

相続・遺言、そして終活サポートを専門に、
「安心して次の世代へ想いをつなぐ」お手伝いをしています。

公正証書遺言書の作成や遺産分割の準備など、
大切な家族のために“今できる備え”を一緒に考えていくことが、私の仕事です。


「うちは家族仲がいいから、遺言書なんて必要ない」

そう思っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、行政書士として多くのご家族の相続に関わってきた経験から言えるのは――

相続トラブルの多くが「仲が良い家族」でも起こっている

という現実です。

今回は、実際に遺言書がなかったために相続手続きで苦労されたケースを、
プライバシーに配慮しながらご紹介します。


佐藤家(仮名)のケース

家族構成

  • 父(故人):会社員として定年まで勤務
  • 母:専業主婦
  • 長男:都内在住、会社員
  • 次男:地方在住、会社員
  • 長女:海外在住、結婚して現地で生活

佐藤家は特に問題のない、ごく普通の家族でした。
父は几帳面で家計簿もしっかりつけるタイプ。
「自分が亡くなった後のことも考えている」と家族は安心していました。


突然の別れ

父が心筋梗塞で急逝したのは、70歳の誕生日を迎えた翌月のこと。
葬儀が終わり、相続の手続きを始めようとしたとき、問題が表面化し始めます。


想定外の困難

1. 遺言書がない

書斎を探しても遺言書は見つかりません。
几帳面な性格から「書いているはず」と思っていた家族は驚きました。

専門家の視点:
遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、
全員の実印と印鑑証明書が必要になります。
一人でも欠けると手続きは進みません。


2. 不動産の名義が複雑

自宅の土地の一部が、すでに亡くなっている祖父名義のままでした。
つまり、父の相続の前に祖父の相続手続きが必要だったのです。

専門家の視点:
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記は義務化されました。
不動産を相続した場合、取得を知った日から3年以内に登記申請を行うことが義務です。

正当な理由なく登記を怠った場合、
10万円以下の過料(行政上の罰金)が科される可能性があります。

こうした「名義放置」は相続を複雑化させ、次世代に大きな負担を残します。
生前のうちに専門家が名義関係を確認し、整理しておくことが何より重要です。


3. 相続人全員の同意が必要

遺産分割協議書に相続人全員の実印・印鑑証明が必要。
しかし、長女は海外在住で、日本の印鑑証明を取るには一時帰国が必要でした。

専門家の視点:
公正証書遺言があり、遺言執行者が指定されていれば、
遺言の内容に基づき遺言執行者が各種手続きを進められます。

海外在住の相続人の負担も大きく軽減されます。


4. 意見の相違

当初は「母がすべて相続でいい」と子どもたちも同意していました。
しかし、長男の配偶者が「法定相続分で」と主張。

次男は「母の老後を守るために全てを母へ」と対立。
長女は海外で事情をつかみにくく困惑していました。

専門家の視点:
「仲が良い」家族でも、配偶者の意見や経済状況の違いにより見解は分かれます。
遺言書があれば、故人の意思が明確に示され、対立は大幅に減ります。


5. 想定外の財産

銀行の貸金庫から、父の出身地の地方銀行の定期預金(500万円)が見つかりました。
最寄り支店まで片道3時間――家族の誰も、その存在を知りませんでした。

専門家の視点:
こうした「想定外の財産」は、本人しか知らず、家族が気づかないケースが非常に多いです。

全国銀行協会の「預金照会制度」を使えば、死亡後でも全国の銀行口座を一括で確認できますが、
申請には戸籍・相続関係書類が必要で、結果が出るまで1〜2か月以上かかることもあります。

さらに、貸金庫・証券口座・生命保険・暗号資産など、
それぞれ別ルートで照会が必要な場合もあり、
全容を把握するには非常に時間と労力がかかります。

遺言書を作成する際に、あらかじめ財産目録を作り、
専門家と一緒に「どこに・何があるか」を整理しておくことが、
トラブルを防ぐ最も確実な方法です。


長引く手続き

最終的に、佐藤家の相続手続きは1年半以上かかりました。

  • 長女の一時帰国:渡航費・休暇の負担
  • 祖父名義の土地の処理:専門家費用が追加発生
  • 家族の話し合い:何度も集まり、ときに感情的に
  • 地方銀行対応:次男が繰り返し現地へ

最終的に専門家の助言を得て合意に至りましたが、
費用は約80万円。
そして何より、家族に残った疲労感とわだかまりは、お金では測れませんでした。


行政書士の視点から見えたこと

私の経験では、「遺言書がないばかりに手続きが長期化」する例は少なくありません。
一方、公正証書遺言を事前に作成していたケースは、1〜2か月で完了することもあります。

佐藤家の事例から学べること

事前にできた対策:

  1. 財産の整理(祖父名義地や地方預金の事前把握)
  2. 公正証書遺言の作成(全員の押印・印鑑証明が不要)
  3. 遺言執行者の指定(専門家が窓口となり家族の負担を軽減)
  4. 明確な意思表示(配偶者間の見解相違を抑止)

結果の違い(一般論):

  • 手続き期間:長期化 → 短縮されることが多い
  • 費用:後追いコスト増 → 抑えられることが多い
  • 家族の負担:押印・書類収集が重荷 → 最小限で済む
  • 海外相続人:帰国必要 → 不要または軽減

佐藤家の長男の言葉

「父は几帳面なのに、なぜ遺言書を書いてくれなかったのか――
最初は恨めしく思いました。でも、きっと『うちは仲がいいから大丈夫』と思っていたのでしょう。
悲しみに向き合う時間もなく、手続きに追われた1年半でした。
もし専門家に相談して公正証書遺言を作っていたら、と何度も思いました。
今は自分が準備しています。子どもたちに同じ思いをさせたくないからです。」


今、あなたにできること

「うちは仲がいい」
「財産は大したことない」
「まだ元気」

そう思う方ほど、早めの準備がおすすめです。

公正証書遺言書は家族への最後の手紙です。この一通が家族を守る、私はそう思っています。

遺言書作成で実現できること

  • 手続き期間の短縮
  • 費用の抑制(後追いコストを防ぐ)
  • 家族の負担軽減(悲しみに向き合う時間を守る)
  • 明確な意思表示(不要な対立の回避)
  • 専門家の伴走(複雑な実務を任せられる安心)

まずは「財産の棚卸し」から

  • 不動産(名義・評価)
  • 預貯金・有価証券(金融機関・残高)
  • 生命保険(受取人)
  • 負債・保証の有無

これを整理するだけでも、相続時の混乱は大きく減ります。


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注記:本記事は実例を基にしていますが、プライバシー保護のため一部を変更しています。
具体的な手続き・判断は個別事情により異なります。お気軽にご相談ください。

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