#20 自筆証書遺言と公正証書遺言、どっちを選ぶべきか?

ブログ

こんにちは。神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚・川西など、兵庫県の阪神地域を中心に活動している行政書士の小田晃司です。在留資格(ビザ申請)を中心に、建設業許可や補助金、相続・遺言・終活支援まで、地域に根ざしたサポートを行っています。

今回は、遺言書を作るときに多くの方が迷う「自筆証書遺言と公正証書遺言の違い」について。実際に相談現場で感じるリアルなポイントを、行政書士の視点から分かりやすくまとめてみました。

「とりあえず自分で書いてみたんです」という方、けっこう多い。。

相談に来られる方の中には、「実は、もう自分で書いてみたんです」とおっしゃる方が少なくありません。自分で遺言書を書こうって思われたこと、その行動力は本当に素晴らしいことだと思います。

ただ、正直なところ、その遺言書を見せていただくと「あぁ、これだと無効になっちゃうかもしれません」とお伝えしなきゃいけないケースもあります。

自筆証書遺言って確かに手軽なんですけど、法律で決まっている要件を満たさないと、せっかく書いた遺言書が無効になってしまう場合があります。そうなると、残されたご家族は「お父さんの気持ちは分かるんだけど、法的にはこれ使えないみたい…」って、すごく辛い状況になってしまいます。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

では、自筆証書遺言について整理してみましょう。

メリット

  • 費用がほとんどかからない(紙とペンがあれば作れます)
  • 思い立ったときにすぐ書ける
  • 内容を誰にも知られずに作れる
  • 法務局の保管制度を使えば、紛失とか改ざんの心配が減る

デメリット

  • 本文は自書が必要で、財産目録はパソコン作成可(各ページへ署名押印が必要)
  • 日付、署名、押印など、形式面でけっこう厳しいルールがある
  • 法的に有効かどうか、自分じゃ判断しにくい
  • 亡くなった後、家庭裁判所で検認っていう手続きが必要(法務局保管を除く)
  • 専門家のチェックが入らないから、内容に問題があっても気づけない

特に気をつけてほしいのが、「ちょっとした書き方のミス」で無効になっちゃうリスクなんです。例えば、日付を「令和7年3月吉日」って書いたらアウト。「長男に自宅を相続させる」って書いても、不動産の特定が足りなくて揉める原因になることもあります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

一方で、公正証書遺言はどうでしょうか。

メリット

  • 公証人が作成する正式な遺言書で、法的に有効な形が保証される(私たち行政書士は、その原案作成や手続き調整をサポートする立場です)
  • 原本が公証役場で保管されるから、紛失とか改ざんの心配がない
  • 亡くなった後、家庭裁判所の検認手続きが要らない
  • 専門家(私たち行政書士とか)と相談しながら内容を練れる
  • 病気とかで字が書けない場合でも作れる

デメリット

  • 費用がかかる(公証人手数料は財産の額で変わりますが、だいたい数万円〜十数万円くらい)
  • 証人が2人必要
  • 公証人との日程調整とか、ちょっと手間がある
  • 公証役場まで行く必要がある(出張もしてくれますが別料金です)

費用の面では確かに自筆証書遺言より負担が大きいんですけど、「家族が困らない」「確実に想いを伝えられる」っていう安心感は、お金には代えられないものだと思います。

実際にあった話

ある70代の男性の話なんですが、最初は自分で遺言書を書かれてたんですね。でも、書いた内容を改めて見直したときに、「これで本当に妻が困らないかな?」って不安になって、相談に来られました。

見せていただいたら、確かに法的には一応有効なんですけど、不動産の書き方が曖昧で、預貯金についても「○○銀行の預金」ってしか書いてなかったんです。これ、もし複数の支店に口座があったら、どれのこと指してるのか分からなくなっちゃいますよね。

結局この方、公正証書遺言で作り直すことにされました。「ちょっと費用はかかったけど、これで安心して眠れるよ」っておっしゃってて、すごく印象に残ってます。

自筆証書遺言が見つかったら、どんな流れになるの?

ここで、実際に自筆証書遺言が残されていた場合、どんな手続きが必要になるのか、具体的にお話ししておきましょう。

先日、お母様を亡くされた50代の女性から相談を受けました。遺品整理をしていたら、タンスの引き出しから封筒に入った遺言書が出てきたそうです。「中身を確認していいですか?」と聞かれたんですが、実はこれ、勝手に開けちゃダメなんです。

自筆証書遺言の場合の流れ

  1. 遺言書を見つけても開封しない 封がしてある遺言書を勝手に開けると、5万円以下の過料(行政上の制裁)が科される可能性があります。中身が気になる気持ちはすごく分かるんですけど、ぐっと我慢してください。
  2. 家庭裁判所に検認の申立てをする 遺言書を見つけたら、お母様が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に「検認」の申立てをします。必要な書類は、遺言書、お母様の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本など、けっこう集めるのが大変です。
  3. 検認期日まで待つ(だいたい1〜2ヶ月) 申立てをしてから実際に検認が行われるまで、1〜2ヶ月かかります。その間、銀行口座の解約も不動産の名義変更も、基本的に何もできません。葬儀費用の支払いとかで困る方も多いです。
  4. 検認期日に家庭裁判所へ 指定された日に家庭裁判所に行って、裁判官の前で遺言書を開封します。相続人全員に通知が行きますが、全員が出席する必要はありません。ただ、来れる人は来た方がいいですね。
  5. 検認済証明書をもらう 検認が終わると「検認済証明書」というものを発行してもらいます(手数料は1通150円)。これがないと、銀行や法務局での手続きができません。
  6. ようやく相続手続きを開始 検認済証明書と遺言書を持って、ようやく銀行や法務局での手続きができるようになります。

先ほどの女性の場合、お母様が亡くなってから実際に預金を引き出せるまで、3ヶ月近くかかったそうです。「もっと早く手続きできると思ってました」とおっしゃってました。

法務局保管制度を使った場合 ちなみに、自筆証書遺言でも法務局の保管制度を使っていた場合は、検認が不要になります。ただし、生前に法務局に預けておく必要があるので、すでに書いてしまった遺言書をあとから預けることもできますが、形式不備があると受理されないため、事前に形式チェックが必須です。

公正証書遺言の場合は?

一方、公正証書遺言だった場合は、こんなにシンプルです。

  1. 遺言書の存在を確認 公証役場で遺言検索システムを使えば、遺言書があるかどうかすぐに分かります(平成元年以降に作成されたものに限ります)。利害関係人(相続人・受遺者など)が戸籍等を添付して照会できます。
  2. 遺言書の謄本を取得 遺言書が作成された公証役場で、謄本(写し)を発行してもらいます。
  3. すぐに相続手続きを開始 検認が不要なので、謄本を持ってすぐに銀行や法務局での手続きができます。

お母様が亡くなって1週間後には銀行の手続きを始められた、というケースもあります。精神的にも大変な時期に、手続きの負担が少ないっていうのは、本当に助かるんですよね。

相続人の方からすると、「お母さん、ちゃんと準備しててくれたんだな」って感じて、悲しみの中でもちょっと救われる気持ちになるそうです。

じゃあ、どっちを選べばいいの?

で、結局どっちがいいのかって話なんですけど、私の考えはこうです。

自筆証書遺言が向いてるケース

  • 財産がシンプルで、分け方もはっきりしてる場合
  • とりあえず「遺言書がある」っていう状態を作りたい場合
  • できるだけ費用を抑えたい場合
  • 法務局の保管制度を使える方

公正証書遺言が向いてるケース

  • 不動産があったり、複数の銀行に預金がある場合
  • 相続人の関係がちょっと複雑な場合(前の奥さんとの間に子どもがいる、とか)
  • 「絶対に有効な遺言を残したい」って思う場合
  • 高齢だったり病気で、将来の判断能力が心配な場合
  • ご家族に手間をかけたくない場合

正直に言うと、私は多くの方に公正証書遺言をお勧めしてます。理由はシンプルで、「確実だから」なんです。せっかく家族のことを思って書いた遺言書が、形式がちょっと違うだけで無効になっちゃうのって、あまりにも悲しいではないか、ということです。

もちろん、自筆証書遺言でも全然問題ないケースもたくさんあります。ただ、私の事務所では、できるだけ多くの方に利用していただけるよう、全国的にも低価格帯のサポートプラン(29,800円・税抜)を用意しています。正直いうと、日本一低価格の公正証書遺言書作成サポートだと自負しています。

だから、どうしてもこっちを推したくなっちゃうっていうのが本音です(笑)。でも、それだけじゃなくて、やっぱり「確実性」っていう部分で、ご家族の安心につながるっていう想いがあるからなんです。

もう自筆で書いちゃった人も大丈夫です

すでに自筆証書遺言を作った方も、心配しないでください。遺言書って、何度でも作り直せるんです。新しい遺言書が古い遺言書より優先されるので、「せっかく書いたのに無駄になる」なんてことはありません。

むしろ、一度自分で書いてみたことで、「何を伝えたいか」が頭の中で整理できてるはずです。その内容をベースに、専門家と一緒に公正証書遺言を作れば、話もスムーズに進むと思っています。

迷ったら、まず相談してみてください

「どっちがいいか分からない」「自分の場合はどうなんだろう?」って迷ってる方は、ぜひ一度、専門家に相談してみてください。財産の状況とか、家族関係とか、ご本人の想いとかを聞かせていただいて、一番いい方法をアドバイスさせていただきます。

相談したからって、必ず依頼しなきゃいけないわけじゃないです。「話を聞いてもらって、自分で判断できるようになった」ってだけでも、十分に意味があると思います。

実際にお話ししてみることで、「自分に合う方法」がはっきり見えてきます。

【無料オンライン相談】(電話OK/資料不要)

初回相談はオンライン・電話でも対応していますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。LINEで友だち登録して気軽に聞いてもらっても大丈夫です。

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました