こんにちは、阪神エリアを拠点に活動している行政書士の小田晃司です。
私は外国人の在留資格(ビザ申請)を専門にしながら、人材不足の解消や企業の経営改善、土地や地域資源の活用支援にも取り組んでいます。補助金申請から医療ツーリズムまで、幅広いサポートを行っています。
このブログでは、そうした現場の実例や、私自身が日々感じていることを交えながらお届けしていきたいと思います。
日本の人口減少と病院経営の現実
ご存じの通り、日本は人口が減り続けています。
国立社会保障・人口問題研究所の試算では、2070年には総人口が8,700万人を下回り、高齢化率は38%近くに達するとされています。
そして医療需要にも「ピーク」がある。
2040年前後を境に、入院患者数は減っていくと見込まれているのです。
いまは患者が多くて病院が忙しいとしても、いずれ「ベッドが余る」時代が来るかもしれない。これは地方の病院やクリニックにとって大きな不安材料です。
世界では「医療ツーリズム」が伸びている
一方で、海外に目を向けると医療ツーリズムはぐんぐん拡大しています。
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Grand View Researchの調査では、世界市場は2024年に約4.6兆円(USD 31.1B)、2030年には約13.1兆円(USD 87.3B)まで広がると予測されています。
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IMARC Groupの調査では、さらに大きな数値が出ていて、2024年に約14.4兆円(USD 144.5B)、2033年には70兆円(USD 704.8B)に達するという見込みです。
数字の幅はありますが、どの調査でも「右肩上がりの成長産業」であることは共通しています。
アジアではマレーシアやシンガポールが先行例です。
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マレーシアは2023年に約666億円(USD 444M)の収益を上げ、政府は2030年までに年4,000億円規模を狙っています。
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シンガポールも2020年で約330億円(USD 220M)、2024年には約400億円(USD 270M)に拡大しました。
医療の質に加えて、英語対応や渡航サポートなど「受け入れの仕組み」を整えることで、海外患者を引きつけているわけです。
日本の病院にとっての可能性
日本は世界的に見ても医療水準が高い国です。
ただし外国人患者の受け入れはまだ限定的で、アジアの競合国に比べると遅れています。
けれど、人口減少で国内患者が減っていく未来を考えるとどうでしょう。
「外国からの実費患者を受け入れる」という選択肢は、病院経営の柱の一つになり得るのではないでしょうか。
たとえば、中規模の病院が年間500人の外国人患者を受け入れるとします。
1人あたり平均20万円の治療や健診を提供すれば、年間で1億円の新しい収益になります。通訳や渡航サポートなどのコストを引いても、数千万円規模の利益が見込める。
これは机上の空論ではなく、マレーシアやシンガポールが実際に数字で証明しているモデルです。
取り組む上での準備
もちろん課題もあります。
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言語や文化の壁(医療通訳、多言語対応)
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ビザや保険といった制度の壁
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医療安全の確保(国際基準の認証など)
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地域住民の医療を圧迫しないバランス
ですが、旅行会社や通訳者、宿泊施設や保険会社と手を組めば、多くは解決できます。病院単独で抱え込む必要はありません。
おわりに:未来を見据える経営判断を
日本の医療需要は2040年を境に縮小していくことが予測されています。
患者が減る現実に直面してから慌てるのではなく、今のうちに海外からの需要を取り込む準備をしておくこと。それが病院経営のリスクを和らげ、同時に新しい収益の柱をつくることにつながります。
医療ツーリズムは観光ビジネスではなく、地域医療を守るための経営戦略。
病院経営者の皆さんにとって、今だからこそ真剣に考えるべきテーマなのかも知れません。


